「尊厳死宣言公正証書」は、ご自身が将来、病気や老衰などで治療によって回復の見込みがなくなり、延命治療だけが残されたような末期状態になったときに、「ただ命を延ばすためだけの延命措置は受けたくない」「苦痛をやわらげる処置を優先してほしい」など“あなたの意思”を、公証人の前で書面にしておくものです。
公正証書にすることで、たとえ意思表示が難しい状態になっても、本人の希望であることを、家族や医師・医療機関に対して、確実に示すことができます。
✅ 公正証書による尊厳死宣言のメリット
この方法で意思を残すことで、次の利点が期待できます
- 意思が明確である — 普通のメモや口頭とは違い、「本人の意思であること」が公文書として記録され、公的な証明力がある。
- 医療・医師への伝わりやすさ
日本尊厳死協会の機関誌「リビング・ウィル」のアンケート結果では、同協会が登録・保管している「尊厳死の宣言書」を医師に示したことによる医師の尊厳死許容率は、近年は9割を超えいると言う調査結果もあります。
日本公証人連合会:「尊厳死宣言公正証書」について、説明してください。から抜粋
⚠️ でも注意 — 公正証書にしても「絶対に尊厳死が保証される」わけではない
ただし、大切なのは次のような限界とリスクを理解しておくことです:
- 法的な義務・拘束力があるわけではない — 日本には「尊厳死を実現する法律」は存在しません。公正証書はあくまで「本人の意思であることを証明できる」に過ぎません。これは医療の場で「必ずその通りに行われる」ことを保証するものではありません。
- 医療現場や家族の同意・理解が必要 — 延命措置の中止や緩和的医療には、医師の判断、家族の希望など、さまざまな要素が関係します。「尊厳死を実現する法律」は存在しない以上、公正証書があっても、希望通りになるとは限りません。
- 作成には「意思能力があるときに」行うことが前提 — 判断能力が衰えた後では、公正証書として尊厳死宣言を作成することはできません。しっかりしている時に、考えておく事が大事です。
🛠️ もし作るなら — 手続きの流れとポイント
- 自分の希望を文章にまとめる
- どんな状態になったら尊厳死を望むか
- 延命を望まないこと、苦痛を和らげる治療は受けたいことなどを明記
- 最寄りの公証役場に予約して、公証人と打ち合わせ
- 公正証書は公証人(法務大臣任命)によって作成される公文書です。面談であなたの意思確認を行います。
- 必要な書類と手数料を準備
- 実印や印鑑登録証明書などが求められる場合があります。
- 手数料や公証人の出張を依頼する場合の費用など、事前に確認しておきましょう。
- →必要な打合せは当方で依頼者と公証人との間で確認打合せを行います。
- ご家族や医療に関わる人に、自分の意思と宣言があることを伝えておく
- 書面を残すだけでなく、家族や医療関係者に「こういう意思書を作った」「こういう希望を持っている」と共有しておくことで、いざというときに理解・尊重されやすくなります。
🎯 私(行政書士)の考え — “備え”としての尊厳死宣言
終活や生前準備を考える中で、多くの人は「財産」「相続」「葬儀」「遺言」などに意識が向きがちです。しかし、もしものとき――たとえば重い病気や認知症などで判断できなくなったとき――に、「どんな最期を迎えたいか」「どんな治療を望むか」をあらかじめ自分の意思として残しておくことは、とても大切なことです。
「尊厳死宣言公正証書」は、あなた自身の“命の最期の方針”を、できるだけクリアに、できるだけ正確に残す手段のひとつです。とはいえ、それだけで「安心」「万全」とは言えません。家族や医療関係者との対話、健康状況や医療環境の理解もあわせて進めるべきです。
もし「尊厳死宣言公正証書の作成を考えたい」「内容をどう書けばいいかわからない」「家族にどう伝えればいいか悩んでいる」ということであれば、喜んでお手伝いいたします。お気軽にご相談ください。
よくある質問(Q&A)
Q1. 尊厳死の公正証書があれば、必ず延命治療をしないでもらえますか?
いいえ。
尊厳死の公正証書は、本人の意思を医療側や家族に伝えるための重要な資料にはなりますが、
医療機関に法的拘束力を持つものではありません。
医師は、患者の状態・家族の意見・医療倫理を考慮して最終判断を行います。
Q2. 公正証書にしておけば、家族が反対しても尊厳死は実現しますか?
必ずそうなるとは言えません。
家族が強く反対する場合、医療現場はトラブルを避けるため慎重になります。
そのため、公正証書を作る際には
家族に内容を共有し理解してもらうことがとても大切です。
Q3. 尊厳死の公正証書は、成年後見人がついていても作れますか?
尊厳死宣言は本人の意思能力が必要です。
判断能力が低下して後見開始後の場合、作成は原則難しくなります。
体調が安定している早い段階での作成が望ましいです。
Q4. 尊厳死と安楽死はどう違うのですか?
尊厳死=自然な死を妨げない
安楽死=人為的に死を早める行為
日本で認められるのは「尊厳死」であり、「安楽死」は法律上認められていません。
Q5. 尊厳死宣言を撤回することはできますか?
いつでも可能です。
気持ちが変わった場合、公証役場で内容の変更・撤回ができます。
大事な注意すべき点
繰り返しになりますが大事な点をまとめました。本当に大事な点ですのでくどいようですがもう一回記載しておきます。
1. 尊厳死宣言には法的拘束力がない
尊厳死公正証書は、本人の意思を明確に示す「資料」としては非常に有用ですが、
法律上は医師に義務を課す文書ではありません。
そのため医療機関によって対応が異なる可能性があります。
2. 家族とのトラブル防止が必要
尊厳死は倫理的な問題を含むため、
家族が「治療してほしい」と強く望むと、公正証書があっても実現できないことがあります。
→ 作成と同時に家族の理解を得ることが重要です。
3. 医師の判断と医療現場の方針が優先される
救命の必要性が高い場合や、判断が難しいケースでは、
医師は患者の生命を守る責務から尊厳死宣言に沿わない判断をすることがあります。
4. 生命倫理上の慎重な取り扱い
尊厳死宣言は「本人の意思を尊重する」一方で、
「治療を控えることが本当に本人の利益になるか?」という倫理的な問題を常に伴います。
そのため、公証人も慎重に確認を行い、
本人に十分な説明がなされているかを重視します。
5. 判断能力が弱った後では作れない
尊厳死宣言は本人の明確な意思表示が前提です。
認知症の進行後など、判断能力に問題がある場合は作れなくなってしまいます。
→ 早めに準備することがポイントです。